10. 過塩素酸塩の溶解性

<アーギュメント>
過塩素酸ナトリウム(NaClO4)と過塩素酸カリウム(KClO4)の2種類の塩のうち、
水にずっとよく溶けるのはどちらであろうか。
ここで注意すべき事項は、
「陽イオンと陰イオンのイオン半径が大きく違う塩のほうが、
イオン半径があまり違わない塩に比べてみると、ずっと水に溶けやすい」
という一般則である。
そしてNa+とK+の六配位の場合のイオン半径は、
それぞれ0.102 nmと0.138 nmである。
だから、NaClO4のほうがKClO4よりも水にはずっと溶けやすいはずである。



<問>
このアーギュメントが基づいている前提は、次のうちどれか?

A 水は極性溶媒である。
B カリウムの原子番号はナトリウムよりずっと大きい。
C 過塩素酸イオンのイオン半径は0.14 nmよりずっと大きい。
D Na+とK+は周期表中で同じ族に属している。
E Na+はK+よりも電気的にずっと陰性である。

<解答>
消去法でいくとAしか残らないのだが、わからない。
確かに非極性溶媒中では極性溶媒中とは異なる挙動を示すであろう。

このアーギュメントでは
NaClO4は陽イオンと陰イオンのイオン半径が大きく違うが
KClO4はイオン半径があまり違わないから
NaClO4のほうがKClO4よりも水にはずっと溶けやすいはずだと言っている、
と私は理解したのだが……

こういう場面で「あまり」とか「ずっと」とかいう半定量的な表現は正直困る。

B. ナトリウムの原子番号は11、カリウムは19。
カリウムの原子番号はナトリウムより「ずっと」大きいだろうか?
それはともかくとしても、原子番号が大きいことが
かならずしもイオン半径が大きいことを意味するわけではない。

C. 過塩素酸イオンのイオン半径は0.14 nmくらいである、
というならわかるんだが
過塩素酸イオンのイオン半径が0.14 nmより「ずっと」大きかったら
(たとえば2Åくらい)
私の感覚ではKClO4はイオン半径が「あまり」違わないとは言えない。

D. ここで焦点になっているのはイオン半径であって、
同族元素かどうかは関係ない。
何ならナトリウムイオンの代わりにアンモニウムイオンでもいい。
アンモニウム塩も、ナトリウム塩ほどではないにせよ、
カリウム塩よりは水に溶けやすい。

E. ナトリウムの電気陰性度(ポーリング)は0.93、カリウム0.82。
ナトリウムはカリウムより電気的に「ずっと」陰性だろうか?
このアーギュメントに、電気陰性度に関係する事柄はあっただろうか?