8. 不活性電子対効果

<アーギュメント>
いわゆる”不活性電子対効果“は、
周期表のなかのp-ブロック元素において、
下に進むほどs電子が結合に関与する傾向が著しく減少するという
観察結果を説明している。
この実例として次のものがあげられる。
Ge(II)は強力な還元剤であるがGe(IV)は安定である。
Sn(II)は還元性のイオンであるが、Sn(IV)は共有結合性で安定である。
Pb(II)はPb(IV)に比べてはるかに安定である。

<問>
ここから導きだされる一般的な帰結をまとめるとすると、
次のうちどれが最もふさわしいか?


A 第14族においては、周期表を下に進むにつれて
酸化数が+2の状態の安定性が増す。
B 不活性電子対効果は、2個のs電子がもつ固有の性質である。
C 鉛(II)化合物はイオン性である。
D 鉛(IV)化合物は酸化剤としてはたらく。
E 炭素と硅素の場合には、酸化数が+4の場合のみ安定である。

<解答>
正解はA。消去法で。

B. 不活性電子対効果(inert-pair-effect)は
s電子の固有の性質ではなく
相対論的効果?(relativistic effects)によるものである。

Cについて、このアーギュメントは何も言及していない。
Cそのものは正しいと思うが、確信がない。

Dは正しい。しかも強力な酸化剤だったと思った。
しかし「アーギュメントから導きだされる一般的な帰結」ではない。

Eについても、このアーギュメントは何も言及していない。
言及はしていないが、たとえばメタンは酸化数-4だが
安定であることを考えるとむしろ誤りと言える。