14. カルボン酸塩脱炭酸の反応機構

<アーギュメント>
カルボン酸の塩類と臭化シアンは次式のように反応して
アルキルニトリルを与える。

RCOONa + BrCN → RCN + CO2 + NaBr

この反応のメカニズムとして、カルボン酸にシアン化物イオンが攻撃して、
COO-原子団が置換されるというものが提案された。

<問>
この提案された反応機構に対する最も強力な反論となるのは、
次のうちのどれか?


A 出発原料のカルボキシル基の炭素を14Cで標識した場合、
生成物のニトリルの炭素も同じように14Cで標識されたものとなる。
B カルボン酸塩がナトリウムイオンと二酸化炭素に変化するのだから、
この反応機構は上に提案されたような簡単なものではない。
C 反応収率が100%にならないから、他の副反応が起こっているに違いない。
D この反応は、Rがアルキル基の場合よりも、
芳香族原子団(アリール基)の方がずっとよく進行する。

<解答>
正解はA。
カルボキシル基がシアノ基で置換されるという話なのだから、
カルボキシル基なりシアノ基なりの炭素をラベリングしてやれば良い。
カルボキシル基の炭素をラベリングして、
14CがCO2の方に検出されれば提案された反応機構は正しかったわけだし、
シアノ基の方に検出されれば間違っていたということ。
シアノ基の炭素をラベリングしたならこれと逆になる。

Bは、何と言うか、思考停止してません?

Cは、主張自体は正しい。しかしここでは副反応の話は全くしていない。

Dは、多分事実なんだが、反応機構とは関係ない?
Rがアリール基では反応が進むけどアルキル基では進まない、というなら
話はまた別だろうが……。