22. ナフタレンのスルホン化反応

<アーギュメント>
ナフタレンをスルホン化すると、2種類の化合物が得られる。
室温の反応では、生成物はナフタレン-1-スルホン酸である。
ところが165°Cで反応させると、生成物はナフタレン-2-スルホン酸となる。
ナフタレン-1-スルホン酸を硫酸とともに180°Cに加熱すると、
ナフタレン-2-スルホン酸が得られる。

<問>
この観察結果から導きだせる最もふさわしい論理的な推測結果は、
次のうちのどれか?

A 芳香族化合物のスルホン化は、いろいろな種類の生成物を得るための
優れた手段である。
B 室温におけるスルホン化反応は、速度論的制御を受けている。
C 芳香族化合物の求電子置換反応では、
反応生成物はさまざまな混合物であることが多い。
D 芳香族化合物の置換反応の生成物は、実験条件によって大きく変化する。
E この二種類の反応生成物についての相対的な熱力学的安定性は、
温度によって劇的な影響を受けている。

<解答>
「ナフタレン-1-スルホン酸を硫酸とともに180°Cに加熱すると、
ナフタレン-2-スルホン酸が得られる」という記述から
スルホン化は可逆反応であるということ、
ナフタレン-2-スルホン酸の方がナフタレン-1-スルホン酸より
エネルギー的に安定であること、
ナフタレン-2-スルホン酸の生成に必要な活性化エネルギーは
ナフタレン-1-スルホン酸より大きいこと、
ナフタレン-1-スルホン酸は準安定状態にあることなどが考えられる。

正解はBだと考える。
速度論的制御とは活性化エネルギーの大小で生成物を制御することであり
熱力学的制御とはΔGの大小で生成物を制御することである。

Aだが、スルホン化の用途について、この観察結果からは何も言えない。
Cも事実としては間違っていないが、「この観察結果から導きだせる」結論ではない。
「この観察結果」では混合物についてまったく言及していない。
Dは正しいが、Bの方が具体的である分より解答にふさわしい。

Eについてだが、Eを正しいと仮定し、
「熱力学的に安定」とはΔGが最小値を取ることとすると
ΔG = ΔH -TΔS
ΔGは室温の時はナフタレン-1-スルホン酸<ナフタレン-2-スルホン酸で
高温ではナフタレン-2-スルホン酸<ナフタレン-1-スルホン酸、
ということはΔHもしくはΔSの値が変化しないと辻褄が合わなくなる。
ΔHもΔSも固有の値なので、Eは誤り。